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創作小説 改稿「冒険譚」

 むかしむかし、ある大きな国のはずれの小さな村に、旅人がやって来ました。旅人は子どもたちを集めて、秘密の話をしてくれました。
「この国のどこかにね、宝物が隠されているんだよ。探し出してみたいとは思わないかい?」
 山や海を越え、宝物という夢を追いかける冒険の旅。
 瞳を輝かせ名乗りをあげたのは、一番年下の赤毛の少年でした。
「きっと、ぼくが見つけるよ!約束だ」
 少年は旅人と指切りをして、数日後、本当に旅立ったのです。

 途中立ち寄った町で、少年は金髪の少女と出会いました。
 少女はお金持ちの娘でしたが、助けてほしいの、と打ち明けました。
「裕福な家は、役所にたくさんお金を納めなくちゃいけないんだって」
 かわいそうに、少女は欲しい洋服を我慢して泣いています。少年は、少女と困っているお金持ちたちのために、役所を潰しに行きました。
「人からお金を奪うような悪い奴らは、ぼくが倒すんだ!」
 そう言って、少年はあっという間に役人たちを叩きのめしてしまいました。
 もちろん少女とお金持ちたちは大喜び。
「勇者にふさわしい剣や盾をあげよう」
 少年には立派な道具と、新たな仲間として少女が加わりました。

 このようにして、少年は困っている人を助け、仲間を増やしていきました。
 ある時は心優しげな囚人たちを解放し、ある時は嫌々学校に通わされている子どもたちを全員仲間にしてあげました。救われた人たちは皆、ありがとうと感謝してくれます。
 しかし、少年は威張ることもせず、自由に旅を続けました。
 宝物の在り処の情報を集め、数年後、ついにその場所に辿り着いたのです。

 その場所とは、国中の役所をまとめている官邸の地下室でした。
 少年率いる一行は正々堂々乗り込んで、首相に剣を向けます。
「悪者たちめ、隠している宝物を貰うぞ!」
 少年に勇者の剣を突きつけられても、首相は落ち着いていました。
「貴様らが秩序を乱していると噂の子どもたちか。今ならまだ取り返しがつく。反省して家へ帰りなさい」
 地下室の鍵を渡そうとしない首相に、少年は声を張り上げ剣を振りかぶります。
「反省するのは、お前たちの方だ!」
 最後の敵を倒した少年たちは、地下室へ降りて行きました。

 地下室には、まばゆいばかりの金銀財宝。
「約束を守ってくれたんだね」
 どこからともなく、いつかの旅人が現れて少年たちを褒め称えます。少年は満面の笑みを浮かべて、旅人の手に地下室の鍵を置きました。
「あなたのおかげで、ぼくは楽しい冒険ができた。かけがえのない仲間を手にすることができたんだ。だから、もう宝物なんていらないよ」
 旅人は全てを理解しているように、うなずいて鍵をポケットにしまいました。
 皆で地上へ戻ると、燦々と朝日が輝いています。少年は清々しい気持ちで、次の冒険に夢を馳せ始めましたとさ。おしまい。

 広場で旅人が語り終えると、聴衆は一斉に拍手を送りました。
 思う存分贅沢に暮らせるようになった、金髪の少女と町のお金持ちたちがいます。
 一足早くまた好き放題できるようになった、囚人たちがいます。
 学もないのに勇者の仲間として権力を手にした、勉強嫌いの子どもたちがいます。
 役所から配給される食べ物をあてにしていた貧しい人々は道の端で飢え、囚人の闊歩する姿に町民は怯えて引きこもり、肝心の政治は止まったまま。国の危機に備え宝物が蓄えてあった地下室も、今ではすっかり空っぽです。
「ああ、なんて愉快な物語!」
 少年を駆り立て、まんまと大金を掴んだ旅人は、甲高く笑っていました。

テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

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No title

読ませていただきました。

随分と皮肉なお話ですね。革命家とか正義の味方を揶揄しているんでしょうか。

問題は旅人なんですが、正体は悪魔?

この話の中では自分は多分、飢えた貧しい人か囚人の一人の様な気がするのですが、できれば金持少女になりたかったなあ。

また来ます。

Re: No title

コメントありがとうございます。
決してアンチではないのですが、某海賊漫画を基に書いていましたので、正義の味方の揶揄になるかと思います。
旅人は、確かに悪魔とも取れますね。
金持少女の顛末も、別のお話として書いてみたいところです。

No title

おとぎ話かファンタジー系か…
そんな感じで読み始めましたが、
ラストでどんでん返しなのがバニラさんらしいと思いました。

Re: No title

コメントありがとうございます。
私らしいですか(^_^;)
ついオチはどんでん返しにしてしまいがちなので、綺麗な起承転結をつけられるように健闘中です。

No title

ラストが変わりましたね。

心優しい勇敢な少年が、
結局、無秩序な世界を生み出してしまった…。

最初のは、ただの旅人が子供をだしに、楽に金儲け、というイメージでしたが、
改稿後火消茶碗様のように、悪魔のように見えました。

Re: No title

改稿前のも読んで下さったのですね!ありがとうございます。
「だいすき3」はほぼ書き殴り状態で掲載したので、冗長で話が飛んでいて、反省するばかりです。
ラストはシンプルに、旅人を思い切り悪者に変えたので、悪魔のようになったのかもしれません。
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ばにら

Author:ばにら
マイペースな20代女。
猫とヒヨコが好きです。

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