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アクセサリー

「美希は本当にアクセサリーが好きだよね」
「だって小さくて邪魔にならないし、簡単に自分を可愛くみせられるし、飽きたら取り外せるし」
「でも、センスがなきゃ上手くいかないでしょう」
「みんなが見てくれるから、頑張ってお洒落してるだけだって」

 私はそう謙遜して笑いながら、褒められた新品のピアスに軽く指をあてた。つやつやした大きな輪の感触が心を躍らせる。取り巻きのクラスメイト達は口々に、ピアスは憧れるけど親がうるさい、と不満をもらしてアイブロウで描かれた眉を寄せた。
「もうすぐ修学旅行もあるし、穴開けたいけどなあ」
「まあ美希みたいに毎日細かく変えてくるなんて、絶対できないけどね」
 つけまつげを上下させ真っ黒な瞳を向けてくる彼女らに調子を合わせて、私はひとまずアクセサリーの話で場を盛り上げた。人気ブランドから新作が出るらしいとか、地下街の店がセール中で安いとか、そんな他愛もない話だ。

 そのうちに教室以外の掃除を終えた面々が戻ってきて、いつものように私達も自然解散した。それぞれ親友は別にいる。
「優香、部活の前に宿題出しに行こうよ」
「うん」
 柔らかく下がった優香の目尻には、わずかに睫毛がくっついている程度だ。スッピンと膝丈スカートのせいで、女子高生よりは小学生に近い。アクセサリーらしき物はといえば唯一、事務的な腕時計が鈍く銀色の光を反射させていた。

 役職で答えるなら、クラス全員分の宿題を職員室まで運んできた通り、私と優香は数学係だ。四月に係を決める時、自ら名乗りをあげた優香に加えてもう一人くじ引きで選ぼうということになり、結果運悪く私が当選したのだった。
 しかし、今考えると運が良かったのだと思う。それがきっかけで、こうして優香と仲良くなれたのだから。

「ご苦労さん。なんだ、二人で運んできたのか」
 数学の先生は先に私の抱える山に目をやり、それから少し首を上げて優香の抱える山を見た。
「それ位なら一人で持ってこれただろう」
 能率の問題ではないというのに。
「美希一人に任せたら、宿題の山で前が見えなくなります」
 優香は時折こんな風に私をからかう。そこまでチビじゃないから、と頬を膨らませ素早くツッコミを入れたけれど、内心私は温かい気持ちを感じていた。
 苛められるのが好きな訳ではなく、つまりはこれが求めていた友情なのだと。
 アクセサリーは確かにクラスメイト達からの印象を良くするし、話の種にもなるけれど、当たり障りのない付き合いにしか発展しない。しかし真の友情とは、なんて語りだすのも気味悪がられるだろうから口にはしないが、もっと泥臭いものであるはずだ。
 例えば、少し毒のある冗談を言い合うような。見た目など関係なく、内面だけでお互いを判断するような。

「お前達の仲が良いのは、やっぱり不思議だな」
 数学の先生はそれだけ呟いて机に向き直った為、私達は職員室を出た。
 ちょうど入口で優香が不良らしき生徒にぶつかったが、隣の私をちらりと見ると不良はすごすご引き下がって行った。
「大丈夫?」
「うん」
 素朴な笑顔で頷いて、優香は私の後をついてくる。部活のある美術室へ続く階段を通り過ぎてもなおだ。
「あれ、今日は私と一緒で帰宅部?」
「ううん。教室に鞄置いてきちゃったの」
「帰り道も私と喋りたかったのね。よろしい」
 冗談っぽく言うと、優香は一瞬図星をつかれたような顔をしたけれど、すぐにクスクスと笑い始めて明るく否定した。

 誰もいなくなった教室は、窓から差し込む夕日でほんのり赤く染まっている。鞄を肩にかけ、じゃあねと手を振ろうとしたところで、優香が思い出したように引き止めた。
「そういえば、明日修学旅行の班決めだよね」
「あ、そうだった」
「同じ班に入れてくれる?」
「当たり前じゃない」
 今更何を水臭い。即答したことにほっとしたのか、優香は微笑を浮かべて手を振った。

 優香と絵里の二人きりの美術部では、今日も話に花が咲く。クラスは違っても、優香にとっては絵里こそが気遣いのいらない親友だ。
「優香は本当に美希ちゃんが好きだよね」
「だって小さくて邪魔にならないし、簡単に自分を可愛くみせられるし、飽きたら取り外せるし」
「でも、センスがなきゃ上手くいかないでしょう」
「みんなが見てくれるから、頑張ってお洒落してるだけだって」

(終)

【あとがき】
読んでくださった方、ありがとうございました!
最近、星新一にハマってるので影響されてるかも?(^^;)
また別記事で本紹介したいと思います♪

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基本的に、青春もの、好きです。
しかし、女の友情って…。((((;゚Д゚))))ブルブル

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マイペースな20代女。
猫とヒヨコが好きです。

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