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だいすき3(上)

 これは、ある大きな国のはずれの小さな村から始まった物語。

 澄みきった晴天の日に、少年ラスターは冒険の旅へ出かけようとしていました。
 彼の夢は、この国のどこかにあるという宝を見つけだすこと。幼い頃、村を訪れた旅人が話してくれたのです。人一倍やんちゃで好奇心の強いラスターは、いつの日か自分も旅立って宝を探すと、旅人と約束していたのでした。

「本当に行くのかい?」
 村長は心配して尋ねますが、ラスターは笑顔でうなずきました。
「おう。約束だからな」
 リュックを背負いなおし、やる気に満ちあふれた姿の少年を村の人たちは応援することに決めました。なにせ旅立ちの日に、村人全員が見送りに来るほど人から好かれる性格の持ち主です。
「あいつなら、本当にやってのけるかもしれん」
 村長の言葉に、寂しがって泣いていた女子供は涙をふき、男たちは大きく手を振りました。
「元気でなー!」
「行ってきまーす!」
 こうして、ラスターは村を後にしたのです。

 けれども、そう簡単に宝が見つかるはずもなく、リュックの食糧はあっという間に底をついてしまいました。高い宿に泊まれるだけのお金もありません。
「腹へったなあ」
 ぶつぶつ言いながら見知らぬ町を歩きます。すると、急に女の子がぶつかってきました。

「いたっ」
「わ、大丈夫か?」
 女の子が抱えていたリンゴが落ちて、ごろごろ転がります。
「うまそうなリンゴだな」
 にっと笑ってリンゴを拾ってくれたラスターに、女の子は安心したような顔をしました。
「…お腹減ってるの?」
 その通りな質問に、ラスターは首を縦に振ります。女の子はくすっと口元をおさえて、彼の手を引きました。
「わたし、メートヘンって言うの。良かったら家で食べていきなよ」

 メートヘンは、役所から配給された夕飯を振る舞ってくれました。
 歩き回ってばかりで、しばらく無かった人間らしい食事なだけにラスターは大喜びです。夜も遅くなったので、二人は屋根裏部屋にそれぞれ布団をしいて眠ることにしました。
 けれど、初めて会った子供たちが普段と変わらずすぐに寝ることなど、できるはずもありません。特にメートヘンは、夕飯時に少しだけ聞いたラスターの冒険の話に興味津々でした。

「いいなあ。わたしも冒険してみたい」
 うらやましそうな彼女を、ラスターは不思議がります。
「それなら一緒に行こうぜ。おれも、仲間がいる方が楽しいしさ」
 その言葉に、メートヘンはため息まじりで答えました。
「ムリよ。あなたの故郷の村とは違って、わたしたちの町は管理されてるもの」
「管理?」
「うん。この広い国を、ゲレヒトっていう一人の男が支配していることは知っているでしょう?わたしたちの町みたいに、人がたくさん暮らしていて少し裕福なところは、役所を通してアイツにお金を払わなくちゃいけないの。」

 初めて聞く町の制度に、ラスターは苛立ちを感じました。傍にあったろうそくの炎が、ゆらゆらと揺れています。
「そのためには、わたしだって働かないと。今日もね、あのリンゴを注文先に届けようとしてたところで…」
「おかしいよ」
 ラスターの握りこぶしに、メートヘンはきょとんとして話をやめました。

「なんで、自分が稼いだ金を知らない奴にやらなきゃならないんだ。そのせいで行きたい冒険にも行けないなんて、おかしいだろ」
 メートヘンはそんなこと考えたこともなかった様子でしたが、ちょっと考えてから、そうねと言いました。
「なあ、もしもお金を払わなくてよくなったら、おれと冒険する?」
「もちろん。そんなことになればね」
「この町の人たちも、役所が無くなればもっと自由になれるんだよな」
「きっと、そうよ」
 とまどいつつ返ってくる答えに、ラスターは決心します。
「よし、じゃあ準備しとけよ」

(続)

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マイペースな20代女。
猫とヒヨコが好きです。

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